Ichikawa Zoen Co., Ltd Tokyo branch みどりと人をつなぐ職能
緑師プロジェクトvol.12

緑師ワークショップ プロジェクト 2025

 暮らしの中の自然は、専門家が守るだけでなく、地域みんなで育ててこそ「共有の財産」になります。
 緑は生き物であり、街は常に変化します。だからこそ私たちは、日々の維持管理に加えて、緑の価値を地域と共有し、次の担い手へ手渡していく取り組みが欠かせないと考えています。

 市川造園東京作業所では、都市の緑を守り育てるための意識や取り組みを、現場の外にも広げる取り組みを進めています。造園職人が培ってきた知識や技術、感性は、人と環境をつなぐ力として、これからの時代により必要とされるはずです。
 その思いを実践するべく、私たちは独自の活動として「緑師プロジェクト※」を展開しています。

 ワークショップや出張授業は、私たちにとって活動の場であると同時に、地域の皆さんと一緒に植物に触れ、学び、日本の自然と文化のつながりを確かめ、それを未来へ手渡していくための場でもあります。
 今回は、2025年度に取り組んだ体験型ワークショップや学校での授業をご紹介します。

緑師プロジェクト:「未来の都市生活をより豊かで持続可能なものにするために、都市の緑の管理と啓発を担う造園職人」という新しい職能を“緑師”と名付け、地域や社会と直接つながりながら活動する市川造園東京作業所が掲げる独自の取り組みです。地域への価値発信にとどまらず、造園職人の専門性を社会に役立つ形へ再定義し、担い手確保と定着に向け、待遇や働き方を整えることまで含めて推進しています。
緑師プロジェクトは、その多くが三鷹市役所近くの事務所を起点としています。詳しくは、緑師プロジェクト vol.5を参照。

三鷹一中「職業人の話を聞く会」(25年9月)

 三鷹市立第一中学校のキャリア教育授業「職業人の話を聞く会」に、弊社所長の栗原が講師として参加しました。造園の仕事を、剪定や植栽といった維持管理にとどまらず、空間づくりや地域の環境を支える役割として紹介。施工・生産・デザイン・まちづくり・樹木医など職能の広がりにも触れながら、環境の時代に造園業界が果たせる可能性をお伝えしました。質疑応答では仕事の工夫や将来像に関する質問が相次ぎ、次世代へ仕事を手渡す貴重な機会となりました。

造園の職能は幅広く、環境の時代と呼ばれる現代を牽引する職能の一つです。
事後学習発表会に向けて生徒の皆さんが制作したポスター

緑師ワークショップ「藍の叩き染め体験」(25年9月)

 自分たちで育てた蓼藍(たであい)の生葉を使い、木槌で叩いて葉の形と色をハンカチに写す「藍の叩き染め体験」を実施しました。色が変化していく過程に参加者も驚きながら制作を楽しみ、完成した作品には自然の模様が美しく浮かび上がりました。藍染めの歴史や植物の不思議にも触れる学びの時間となりました。

藍の特徴について、実物を見ながらの解説。
完成のイメージを想像しながら、丁寧に叩いていきます。
葉っぱの形がハッキリとうつりました。

緑師ワークショップ「サシェづくり」(25年9月)

 午後はサシェ(香り袋)づくりを実施しました。剪定枝や落ち葉など身近な植物素材を再利用し、ヒノキ・ユズ・ハーブ類などを小さく刻んで小袋に詰め、オリジナルの香り袋を制作。会場に広がる森林や柑橘の香りを楽しみながら、“みどりの循環”とサステナブルな視点に触れる機会となりました。

香りのある枝や葉っぱは、街の中にもたくさんあります。
香りの効能なども知りながら、自分好みの組み合わせを探します。
ゴミとなってしまう剪定枝も再利用できることを学びました。

ミニ苔テラリウムワークショップ(25年11月)

 11月に「ミニ苔テラリウム」ワークショップを開催しました。手のひらサイズの透明な容器に、ピンセットで数種類の苔や小石を配置し、土を入れて植え付けながら、自分だけの小さな景色をつくる体験です。石や苔の置き方を工夫する作業に参加者は熱心に取り組み、まるで庭づくりのように配置を吟味しながら制作を進めていました。完成品を覗き込むと、苔の庭をそのまま切り取ったような小さな景色が広がります。あわせて、苔が育つ環境やお世話のポイントも紹介し、小さな容器の中に息づく自然を感じながら、暮らしに寄り添う小さな緑を取り入れる時間となりました。

コケを長持ちさせるポイントを押さえながら、テラリウムの魅力も伝えます。
苔の場所や石の置き方を丁寧に調整。配置の工夫ひとつで表情が変わります。
暮らしに寄り添う小さな緑を、それぞれの形で持ち帰っていただきました。

足立区立亀田小学校「みどりのじゅぎょう」(25年12月)

 12月、足立区立亀田小学校にて出張授業を行いました。テーマは「お正月飾りを通じて日本の自然と文化のつながりを学ぶ」です。門松やしめ縄飾りに使われる松・竹・稲わらなどの素材には、自然への感謝や一年の無病息災・豊作を願う心が込められてきました。授業では、こうした背景にも触れながら、小学生にはミニ熊手づくりに挑戦してもらい、身近な植物素材に触れながら“つくる”体験を通して学びを深めました。あわせて先生方には門松づくりにも取り組んでいただき、伝統の意味と素材の手触り・香りを、学校全体で共有する機会となりました。
体育館にて特別授業を実施。お正月飾りと植物素材の意味を、スライドも用いながら共有しました。
子どもたちの問いや気づきを拾いながら、素材や行事の背景を対話形式で深めていきます。
実物の植物素材を手に取り、形や質感を確かめながら学びを進めました。
先生方による門松づくりの様子。竹の据え方や組み方を確認しながら、伝統の工程を体験していただきました。
児童のみんなが制作したミニ熊手。飾りに使う素材に触れながら、伝統行事を“つくる”体験につなげました。
先生方に制作いただいた門松を前に記念撮影。学校全体でお正月を迎える準備の場を共有しました。

「つくってみよう お正月飾り」ワークショップ(25年12月)

 毎年年末の恒例行事となった緑師による「つくってみよう お正月飾り」ワークショップを、2025年も開催しました。今年も募集開始早々に満員御礼。親子参加からお一人参加まで幅広くお越しいただき、回を重ねるごとに定着してきたことを実感しています。
 ワークショップでは制作に入る前に、松・竹・稲穂など、お正月飾りに用いられる植物素材の意味や、自然への感謝と願いが込められてきた背景を簡単に紹介しました。その後、竹や松、南天、葉牡丹などの材料を用意し、緑師スタッフがサポートしながら、ミニ門松または竹一本を大胆に使ったお正月飾りのいずれかを選んで制作していただきました。参加者それぞれが素材の組み合わせや配置を工夫し、世界に一つのお正月飾りが完成。ものづくりの楽しさと日本の伝統文化の奥深さに触れていただく機会となりました。

(ご参加のみなさま、写真撮影へのご協力ありがとうございました)

制作前にお正月飾りの由来や意味などを共有し、制作体験に学びを重ねることも大切にしています。
普段なかなか触れない素材と道具に出会う、ミニ門松づくりならではの土台づくりの工程です。
自然と文化のつながりを伝える機会は、次の世代を担う若い方にも積極的に広げていきたいと考えています。
ここまで出来たら、あとは楽しい飾りつけ。
土台や竹とのバランスを考えながら、彩りを添えていきます。
完成!みなさんの笑顔がとても嬉しいです。

これからの社会に求められる職人を目指して

 人々の暮らしの中で、緑は様々な形で息づいています。公園の木々や街路樹、季節の行事を彩る植物――それらは誰かが手入れをし、想いを込めて受け継いできたものです。しかし現代では、そうした緑や伝統の存在があまりに当たり前になり、ともすれば意識を向けられないこともあります。21世紀は「環境の時代」とも言われますが、未来の世代に誇れる社会にしていくためには、私たち一人ひとりが自然や文化に改めて目を向け、その価値を次世代に伝えていくことが大切です。

 私たち緑師プロジェクトでは、今回ご紹介したようなワークショップや教育活動を通じて、“みどりと人をつなぐ”役割を担うべく日々努めています。地域の皆さんと交流し、ともに学び合う中で、造園職人としての技と心を研ぎ澄ましながら、現代社会における新しい職人像を模索しているところです。こうした活動を継続しながら、これからの社会に求められる職人になれるよう頑張っていきます。今後も市川造園東京作業所の挑戦にぜひご期待ください。

市川造園東京作業所は“緑師プロジェクト”を通じて、造園職人と社会を繋ぐ接点を探っています。
著者
株式会社市川造園 東京作業所
作成
2026年2月